親知らずの抜歯を行った後には、色々な制限があります。
一般的に激しい運動、お風呂、アルコール、タバコに関しては控えた方が良いですが、それでも親知らずの埋まり方、親知らずの周りの化膿状態などにもよって変わって来ます。
これらはどのように影響しあうのでしょうか?
多くの歯科医院で親知らずを抜いた後には消毒処置を抜いた以外の日に行うので、心配ならその時に聞くか、そのような消毒処置を行っていない歯科医院であれば電話で聞いてみるのも良いでしょう。
親知らずを抜いた後に何故運動してはいけないのか?
これは、運動を行うことで心拍数もあがりかつ血圧も上昇します。
激しく運動する事で更に心拍数も血圧も上昇して体の血流が増し、抜歯した部分にも血流も多く流れ込んでしまいます。
そうすると後出血の原因になってしまいまうのです。
親知らずを抜いた後のお風呂について
親知らずを抜いた当日はお風呂は避けた方が良いです。
医療機関のサイトでは、当日はタオルで拭く程度にして対応した方が良いというサイトもあります。
しかし、軽いシャワー程度なら問題ない場合が多いので、シャワーで対応して貰って今まで問題が出た事はないのです。
余程骨の深いところに埋まっていて、体に相当な負荷をかけた時以外はシャワーを浴びて大丈夫でしょう。
実はお風呂に入る温度や時間によっても、血圧や血流に与える影響が異なります。
親知らずを抜いた後のお風呂の温度にも注意した方が良い
親知らずを抜いた日には入浴を避けた方が良いことは先ほど説明しましたが、心配であれば次の日にも後出血を防ぐ入浴方法があるので説明します。
これはあまり知られていないことですが、温度が高すぎると血圧上昇が大きくなり後出血の原因になります。
その為、ぬるめのお湯につかるのが血圧を上昇(後出血)させない一つの方法になります。
では具体的には、どれくらいの温度なのでしょうか?
日本人は熱めのお湯が好みですから、ちょっと温度を考慮することが重要です。
多くの給湯器で温度設定が出来ると思いますから参考にして下さい。
血圧を急激に上昇させる温度の境目と言われているのが41°です。
42°になると血圧が一気に上昇して後出血の原因になります。
38°位だとそれほど大きな血圧の変動がないと言われています(もちろん、寒い所から温かい所へいきなり移動するなどの血圧に大きな変化を与える要因になる冬などは別になります)。
また、お風呂は血圧が上がると考えている人も多いと思いますが、最初に血圧の上昇が起こったあとに血圧は下降します。
温熱効果によって全身の血管が拡張するからです。
その為、抜いた次の日や腫れがある場合は、38°位の低めの温度で入浴するのが良いでしょう。
また、温度を調節してさらに半身浴にすれば通常の入浴よりも血圧の上昇を防ぐことが可能です。
いずれにしても当日および腫れや痛みがあるうちは、お風呂には入らない方が良いでしょう。
お風呂に入ると血行が良くなるので、後出血やさらに腫れる原因になってしまいます。
親知らずを抜いたあとのサウナは?
サウナなども、暑いサウナと水風呂と往復することによって血行が良くなりますので、簡単な親知らずの抜歯でも当日は避けた方が良いでしょう。
数日たって全く腫れがなくなった状態であれば問題ないですが、腫れがある状態でサウナと水風呂を繰り返すと、これも後出血や腫れの原因になるので辞めておいた方が良いでしょう。
他の医療機関が書いたサイトでは親知らずを抜歯後2週間はサウナは控えた方が良いというサイトもあります。
確かに2週間くらい間を開けたら安全ですが、通常の場合はそこまで開けなくても大丈夫な事が多く(これも親知らずの状態によりますが)、腫れがひいていて普通の生活をして問題ないと感じたらサウナに入っても大丈夫でしょう。
親知らずを抜いた後のアルコールについて
アルコールに関してもお風呂と同様にアルコールの血管拡張作用の為に後出血の原因になる可能性があるので控えた方が良いでしょう。
アルコールには血管拡張作用があります(お酒を飲むと顔が赤くなるというのがこれです)。
血流が良くなり、腫れや後出血の原因になります。
私自身は患者さんから聞いたことがありませんが、web上を見ていると親知らずを抜いたその日に飲酒した方のブログなどを見たことがありますが(チャレンジャーだなと思いましたが)、大丈夫な場合と出血ではありませんが具合が悪くなった方のブログを読みました。
多くのサイトでは、腫れや出血よりも具合が悪くなり途中で飲酒を中止したと書いてあるブログが多かったです(ブログに書かない人の方が多いでしょうが)。
アルコールの他にはタバコもその日は控えた方が良いです。
親知らずを抜いたあとのタバコについて
タバコはできれば親知らずを抜いた機会に禁煙した方が、良いかも知れませんが嗜好品なので中々難しいかも知れません。
しかし、タバコのニコチンが血管収縮作用があるので、タバコが傷の治りを遅くする作用があります。
最低でもその日は控えた方が良いでしょう。
歯周病などで、抜歯を行った際にも喫煙者の抜歯後の傷の治りが遅い事に私自身も良く気づきます(文献的にも知られています)。
親知らずを抜いたあとの電子タバコ(アイコス)について
一般的なタバコが親知らず抜歯後の傷の治りを遅らせるのはよく知られている事ですが、アイコスなどの電子タバコと言われる煙の出ないタバコについてはどうなのでしょうか?
結論から言うとアイコスなどの電子タバコでは親知らずを抜いた後の傷の治りを遅らせる作用があります。
これはアイコスなどの電子タバコでもニコチンの影響があるからです。
アイコスの表示を見てもらえばわかりますが、ニコチンやタールの表示がありません。
一般的なタバコについては、タバコの中の量に含まれるニコチンやタールの量について記載が義務付けられています。
しかしアイコスなどの電子タバコについては煙が出ませんのでこのニコチンやタールなどの記載は無いのです。
実は、アイコスなどの電子タバコではタールはないのですが(その為、有害物質の9割削減とうたっています)、ニコチンはそこそこ(1本について1mg~0.5mg、種類によって違います)入っています。
アイコスなどの電子タバコは有害物質が少ないとは思わずに、ニコチンは含まれていますので、親知らずの抜歯後の傷の治りを遅らせる作用があるので、抜歯後は極力吸わない方が良いでしょう。
親知らずの抜歯とタバコの喫煙とドライソケットの関係について
親知らずを抜いた時に生じるドライソケットについて
抜歯をした後に起こる合併症としてドライソケットと呼ばれるものがあります。
これは、通常の抜歯を行った際にも生じる合併症の1つで、抜歯後に痛みが出る原因の多い合併症になります。
ドライソケットは、通常起こることがないのですが何らかの原因で、抜歯した後にできる血の塊が脱落してしまい歯があった場所の歯槽骨に炎症が起こるものです。
ドライソケットは抜歯を行った、歯科医の手技に問題がある訳ではなく原因は良く解っていませんしある一定の頻度で生じてしまいます。
発生頻度は報告者によって異なりますが、多くは数%と言われています(多いものでは10%を超えるものもあります)。
治療法としては以前は、麻酔をして抜いたところを掻き出す治療(再掻爬)が行われていましたが、現在は抗生剤軟膏及び麻酔薬を塗布して傷の治りを早める治療を行います。
上あごと下あごの親知らずを抜いた時の両方で、ドライソケットになる可能性がありますが通常は下あごの親知らずを抜いた時に起こることが多く、上あごではあまり生じることはありません。
タバコの喫煙と親知らずのドライソケットの関係について
タバコを吸う事でドライソケットになるリスクが上がります。
ドライソケットとは血の塊ができてから、それが肉に置換して最後に骨に変わっていくと言う流れで抜歯した後は治っていくのです。
しかし、タバコ血管収縮作用があるニコチンが入っているので、血の塊ができにくくなりドライソケットにもなりやすくなるというマイナスの影響を大きく与えてしまいます。
ドライソケットを考えてもタバコは辞めた方が良いでしょう。
親知らずを抜いた後のうがいについて
うがいに関しては親知らずの抜歯を行った後にはどうしてもちょっと血が混じってしまいます。
それが気になってうがいをたくさん行うと、血の塊が水によって流されてしまい、これも傷の治りを悪くする原因になります。
親知らずを抜いたあとにうがいを行うと血が混ざって気持ち悪いと考えるかもしれませんが、うがいのし過ぎは良くありません。
気になるようだったら優しく唾をお口の中から外に出す程度にして下さい(頻繁なうがいは辞めましょう)。
勢いよくうがいを行い、そのままお口の外にお水を出してしまうと、治る元になる血の塊が口の外に出てしまい傷の治りを妨げてしまいます。
このうがいのし過ぎも先ほど説明したドライソケットの原因になってしまうことがあります。
親知らずを抜いた後にニコンチンガムを噛んでも問題ないのか?
参考:ニコレット
タバコは親知らずの抜歯に悪影響を与えることは、皆知っている事と思われますが、禁煙治療(ニコチン依存症)に用いられるニコチンガムについて、親知らずの抜歯のあとの傷の治りにどのような影響を与えるか知っているでしょうか?
結論から言うと、ニコチンガムも親知らずの抜歯のあとの傷の治りに悪影響を与えます。
ニコチンガムにはニコレットやニコチネルなどがありますが、ニコチンガムに入っているニコチンの成分が血管収縮作用持つからです。
1個につき2㎎のニコチンが入っています。
通常、親知らずの抜歯を行う人でニコチン依存症である可能性は低いですが、通常の抜歯であればこのニコチンガムによる傷の治りを遅くする作用について注意をしなければいけません。
親知らずを抜いたあとのストローの使用について
その他に、ストロー等の使用も血の塊を出だしてしまう可能性もありますが、優しく吸う場合においては問題がないので、ストローを使用する際には優しく吸うようにしてください。
ストローを使用するとお口の中が陰圧になってしまい、勢いよくストローを使って吸うと親知らずを抜いたあとの血の塊を吸い出してしまう可能性があるからです。
現在、ストローの環境問題も取りざたされています。
痛みや腫れが強い場合はストローを使用せず直接口で飲むことが望ましいでしょう。
その他にも親知らずを抜いたあとに避けた方が良い食べ物について
また、アルコールと同様に刺激が強い辛いものも抜歯後の傷の治りを遅くしますので、その日は避けた方が良いでしょう。
特に辛い刺激が強い食べ物は炎症を強くしますので避けた方が良いです。
傷になっていますから、そのような刺激物を食べた場合はヒリヒリしてしまう可能性が高いです。
ちょっと位の辛いものなら大丈夫な場合が多いと個人的には思いますが、辛さに関しては個人差があるのですが抜歯した当日や、痛み腫れがある場合は避けた方が良いでしょう。
キムチやカレーなどの辛い物は避けた方がよいでしょう(上の写真の唐辛子などもかけすぎに注意しましょう)。
特に舌に辛さを感じるものについては傷にも刺激物になります。
出来れば刺激を感じなくても避けた方が良いでしょう。
塩が強い食べ物でもしみる時があるようです(塩の場合はそんなに強くないようですが)。
傷が治るまではこのような刺激物を避けた方が良いでしょう。
親知らずを抜いてお口が開かなくなっても栄養はしっかり取るようにする
親知らずを抜くとお口が開かなくなってしまうことがあります。
これは特に下あごの親知らずを抜いた時に現れることが多い症状で、抜いた後の炎症がお口を開ける筋肉などに波及してしまいお口が開かなくなってしまう現象なのです。
一般的に40mmお口が開かないと開口障害(お寿司は一口で食べることができませんね。概ね人指し指から指2本と半分と言われています)があると言われます。
痛いしお口が開かないし、食事をとらないで大人しくしていようと考える人もいるかも知れませんが、
そのまま食事をとらないと、体を治す栄養源が体に補給されない形になって親知らずを抜いたあとの傷の治りも遅くなってしまいます。
もし十分にお口が開かないようでしたら、液状の栄養補給材やゼリー状の栄養補給材を利用してしっかりと栄養を摂るようにしましょう。
そうしないと、傷の治りが悪くなりお口が開かない状態が長く続いてしまう悪循環に陥ります。
そのため、しっかりと栄養とって傷の治りを早くする方向にもっていくようにした方が良いのです。
親知らずを抜いた後の歯ブラシについて
親知らずを抜いた後の歯ブラシに関しては、痛くない範囲で通常通り行うのが良いでしょう。
傷の治りを最も悪くするのは感染になります。
感染を起こしてしまうと、顎の骨にまで炎症が波及して、場合によっては点滴などで抗生剤の全身投与を行わなければならないことがあります。
そのようなことを避けるためには、清潔にすることが1番なのです。
うがい薬などで、清潔な状態を補助する方法もありますが、最も一般的な方法は歯ブラシになります。
そのため、歯ブラシを行うのが最も効果的です。
親知らずの抜歯した場合には、特別に柔らかくヘッドの小さい歯ブラシを購入するのが理想的です。
この理由は、親知らずを抜いた時だけに専用の歯ブラシを購入するのは現実的でないからです(可能であればというお話しです)。
普段自分が使用している歯ブラシで、親知らずの周りの歯は優しく歯ブラシするのが良いでしょう。
ただし、あまり強い力で何も考えないで行うと後出血の原因になってしまうために注意が必要です。
まとめ
親知らずを抜いた後にお風呂に入ることや激しい運動、アルコールの摂取などを行う事は親知らずを抜いた後の傷の治りを悪くします。
お風呂については、サウナ等についても当てはまるあれが引くまでは控えた方が良いでしょう。
また、刺激の強いものやタバコ、アイコス、ニコチンガムも抜いた後の傷の治りを遅らせるため極力取らないようにした方が良いでしょう。
歯ブラシも傷の周りは優しく行う方が良いでしょう。
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