歯科治療で、笑気ガスを用いる際の禁忌症について以前にお話をしました。
禁忌症とは使ってはいけないと言う意味ですが、絶対的禁忌症と相対的禁忌症に分けられます。
今回は、絶対的禁忌症(絶対に行ってはいけない)である「網膜はく離手術」手術について詳しく解説をしていきます。
絶対的禁忌症であるものの中で、特に眼科領域で行われる「網膜はく離手術」は医療用ガスを用いた手術を行います。
その為、その後に笑気ガス麻酔を用いた方法は絶対的禁忌です。
これは、特に網膜はく離が落ち着くまでは絶対に使用してはいけません!
網膜はく離の再付着術を行うと、SF6(sulferhexaflouride)やC3F8(perfluoropropane)と呼ばれる高分子量の拡散性に乏しい不活性ガスや空気を眼球内に注入します。
この様な患者さんが笑気ガスを吸入してしまうと、笑気ガスがその注入したガスや空気に広がってしてしまい(その結果、眼圧が高くなる)、視力の低下や最悪は失明に至ります。
これらの、ガスや空気の眼球内残留期間はそれぞれ異なります。
空気の場合は5日間、 SF6の場合で10日間、C3F8の場合はなんと60日間残留しているのでこの期間は笑気ガスを併用した歯科治療はさけるべきです。
実際に、失明したケースが報告されています。
これらの事故を防ぐ為に、我々医療人サイドでも確認はしますが問診表にしっかりと記載する(多くの医院の問診表で過去の病気を記載する欄があるので)ようにしましょう。
また、問診表に記載した後に手術を受けたようでしたらその事をスタッフや歯科医師にしっかり伝えるようにしましょう。
笑気ガス麻酔は、歯科治療を行う際には鎮痛効果が高いので痛みが強い処置や痛みに敏感な人が使用すると非常に効果を発揮します。
しかし、歯科治療時に痛みが少なくなることよりも失明してしまうのは回復が難しいので絶対に使用しないように患者さんサイドも気をつけて下さい。
参考文献:
古谷 英毅,東理 十三雄,歯科麻酔・全身麻酔の手引き
YOU歯科 院長 歯学博士 石井 教生