一般に高齢者になると、唾液の分泌がへってきます。
こちらのサイトでは
について詳しく説明しています。
唾液の分泌が減ってしまうと、消化能力も落ちますし虫歯や歯周病にもなり易くなってしまいます。
お口の中は元々唾液でぬれた状態が正常な状態ですから、唾液の分泌が少なくなると色々な問題が生じてしまいます。
義歯を使っている人ならば、適合が悪くなり味覚異常が生じてしまう可能性もあります。
その為、薬剤などを使用しないで唾液分泌を増やす方法が有効になります。
ここで有効になってくるのが唾液腺(唾液をつくる組織)のマッサージです。
まず、唾液腺マッサージを行う時に大きな唾液腺の位置がどこにあるか?という事から説明して行きます。
1.唾液腺マッサージが有効な3つの大きな唾液腺の位置と名称
図1:大きな唾液腺の位置
唾液腺には大きな唾液腺と小さい唾液腺があります。
小さい唾液腺のマッサージをしても、唾液の分必は増えませんので唾液腺マッサージをして効果がある3つの大きな唾液腺について説明をしていきます。
何故そのような専門的なお話をしなければいけないかと言うと、唾液腺マッサージをしてはいけない人がいるのです。
そのような人で唾液腺の位置を覚えていないといけない人がいる為です(それについて詳しく知りたい方はこちらをご覧下さい)。
最初に唾液腺の位置と名称について解説をしていきます。
1)耳下腺
こちらの耳下腺(じかせん)は3つある唾液腺の中で最も大きな唾液腺になります。
図1の1)ように耳たぶから少し前にあります。
こちらの唾液腺はサラサラとした唾液(専門用語で漿液性:しょうえきせい と言います)でかつマッサージもしやすい部位なのでやってはいけない人以外ではお勧めのマッサージポイントです。
2)顎下腺
こちらの顎下腺(がっかせん)は3つある唾液腺の中で2番目に大きな唾液腺になります。
耳下腺に比べると、ちょっとマッサージは難しいかも知れませんが、位置をしっかり理解してマッサージするようにしましょう。
図1の2)ように顎下腺は、下あごの骨の内側にあります。
更に詳しく説明すると、あごの骨が変曲する位置(起きている状態で縦から横に角度が変る位置 専門用語でこれを顎角:がっかく と言います)の内側になります。
3)舌下腺
こちらの舌下腺(ぜっかせん)は3つある唾液腺の中で1番小さな唾液腺になります。
図1の3)ように舌下腺は、下あごのとがった部分の内側にあります。
更に詳しく説明すると、舌の付け根あたりです。
この中で、マッサージするのに注意が必要な唾液腺は耳下腺です。
どういう人が唾液腺マッサージをしてはいけないかについてお知りになりたい方はこちらをご覧下さい。
2.唾液腺マッサージを行ってはいけない人
今回指導するマッサージ方法は自分もしくは家族や介護をしている人もできて非常に有効なのですが、やってはいけない人もいます。
これらの人以外は、薬を使用したり、マッサージを行うことによって害がある訳ではありませんので、唾液が少ないと感じている人は試してみると良いでしょう。
1)全ての唾液腺に共通する人
唾液腺自体に問題がある人
これは唾液腺自体に腫瘍があったり、唾液腺炎などの唾液腺自体に問題がある人は唾液腺マッサージを行うと病状が更に悪化してしまうので禁忌症(絶対にやってはいけない)です。
通常、唾液腺に問題がある場合は、歯科医院もしくは口腔外科で診断を受けているとおもいますので、唾液腺マッサージについては指導を受けていることが多いと思います。
2)耳下腺マッサージをしてはいけない人
(1)お口やのどにガンがある人
通常、お口やのどのガンは手術によって除去します。
手術と一緒に、抗がん剤による化学療法や放射線療法を併用する場合があります。
化学療法や放射線療法の副作用により唾液が少なくなります。
唾液腺マッサージはガン治療後の唾液分泌に対しても有効ですが、この時耳下腺をマッサージはよくありません。
理由はガンを拡散させてしまう可能性があるからです。
詳しく説明すると、口やのどへの再発、あるいは首のリンパ節へガンの転移が認められたりしたら、耳下腺のマッサージを加えることによって再発や転移した部分を拡大させる可能性があるからです。
また、首のリンパ節の転移病巣をマッサージすると、肺などの遠隔臓器にも転移させてしまう恐れもあります。
これらの病気がある人は耳下腺の唾液腺マッサージはしないようにしましょう。
(2)不整脈がある人
不整脈がある人は耳下腺マッサージを行うことによって、不整脈を悪化させたり失神してしまう可能性があるのです。
その理由は耳下腺の近く(後方)には重要な血液を貯める部分があります(専門用語でこれを頚動脈洞といいます)。
この耳下腺マッサージを行うと頸動脈洞に力が加わり、血圧が上昇したと体が感じてしまい脈が遅くなってしまって血圧が低下してしまいます(専門用語で頚動脈洞反射といいます)。
重度の場合は失神してしまうこともあるのです。
その為、不整脈がある人は耳下腺のマッサージは行わないようにしましょう。
(3)メタボリックシンドロームの人
メタボリックシンドロームの人は血栓ができやすく、最悪の場合は脳梗塞を起こしてしまう可能性があるので、耳下腺マッサージは行わないようにしましょう。
これは、可能性が高い訳ではないのですがメタボリックシンドロームの人は血の塊(血栓)ができやすい状態になっています(血中コレステロール値が高い場合など)。
頚動脈という太い血管に血栓がある人は、耳下腺マッサージを行うことで頚動脈が刺激され血栓が流れ出す可能性があります。
この血栓が脳の血管に行き着いた場合は、脳の血管が詰まって脳へ血液が届かなくなります。
その結果として脳梗塞を起こしてしまうのです。
日々の健康増進が重要なのですね。
3.具体的な唾液腺マッサージの方法について
唾液腺マッサージを行う時は、食事の前やお口の中が乾燥していると感じる時など必要に応じてマッサージを行うと良いでしょう。
自分で行う場合は力の加減が上手くできますが、家族の方や介護を行う方が行う場合は最初は弱く行ってあげて下さい。
自分で唾液腺を押してみて力の加減を理解するようにすると効果的です。
回数は5~10回位が適切とされていますが、厳密に決めて行うことはなくて実際にマッサージを受ける人に効果を確認しながら行うのが良いでしょう。
1)耳下腺マッサージ
耳たぶから少し前、上あごの奥歯くらいにひとさし指をあてて、指全体で押すようにしてマッサージを行います。
2)顎下腺マッサージ
下あごの骨の内側で、あごの骨が変曲する位置(起きている状態で縦から横に下あごの骨の角度が変る位置)の内側で柔らかい部分を指で押してマッサージを行います。
この部分を耳の下あたりからあごの先の方まで優しく押してマッサージを行います。
実際に自分で押してみると唾液分泌が促進されるのが分かるので、家族の方や介護の方は自分で試してみると良いでしょう。
3)舌下腺マッサージ
下あごのとがった部分の内側を親指をもちいて下あごから舌を押し上げるような感覚でマッサージを行います。
YOU歯科 院長 歯学博士 石井 教生
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